研究概要 |
外部環境の変化により生じる機械的刺激に対して,細胞が様々な応答を行うことにより,生体はその変化に適応してきた.このような生命の神秘を解明し,ティッシュエンジニアリングという最新の工学手技を利用して,治療に応用しようとするのが本研究の目的である. 脚延長は骨や筋肉・血管といった軟部組織を伸張し組織を改造させる術式であり,脚長差の是正や病的低身長の改善,先天奇形や変形の矯正,外傷後の骨軟部組織欠損といった種々の分野に利用されている.現在の臨床上の問題点として,延長終了後の骨形成に長期間を要することである.本研究ではその原因をフリーラジカルの側面より検討するとともに,ティッシュエンジニアリングを応用しその期間短縮をはかることである。我々はこれまで家兎の脚延長モデルを利用してきた.平成13年度はこのモデルを利用して,延長仮骨に存在する各分化段階にある骨芽細胞のアポトーシスをAnnexin Vの発現・Terminal deoxynucleotidyl transferase (TdT) assayにより共焦点顕微鏡下に観察した.これにより一部の骨芽細胞にアポトーシスが誘導されていることが明らかにされた.パーオキシナイトライトは一酸化窒素とスーパーオキシド(02-)が反応することにより生成されるフリーラジカルである.当初の予定であったパーオキシナイトライトの局在についても,抗ニトロタイロシン抗体を利用した免疫組織染色によりその存在が確認された.このことは脚延長モデルにおける骨芽細胞のアポトーシスに一酸化窒素やスーパーオキシドなどのフリーラジカルの関与を示唆している. このように本研究は当初の予定どおり順調に進捗している.平成14年度はアポトーシスとフリーラジカルの関与を血管新生の観点より検討してゆく.
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