研究概要 |
外部環境の変化により生じる機械的刺激に対して,細胞が様々な応答を行うことにより,生体はその変化に適応してきた.このような生命の神秘を解明し,ティッシュエンジニアリングという最新の工学手技を利用して,治療に応用しようとするのが本研究の目的である.脚延長は骨や筋肉・血管といった軟部組織を伸張し組織を改造させる術式であり,脚長差の是正や病的低身長の改善,先天奇形や変形の矯正,外傷後の骨軟部組織欠損といった種々の分野に利用されている.現在の臨床上の問題点として,延長終了後の骨形成に長期間を要することである.このため延長終了後も延長器具の装着を余儀なくされ,患者のQOL改善の障害となったり,医療経済への圧迫を及ぼしている.本研究ではその原因をフリーラジカルの側面より検討するとともに,ティッシュエンジニアリングを応用しその期間短縮をはかることである. 平成15年度は主にin vitroにおける研究に主眼をおいた.具体的には当科で樹立した骨芽細胞株(HT-3)を対象として,陰圧負荷により細胞に牽引負荷を加えるFlexercellシステムを利用した.骨芽細胞に周期的牽引負荷を加えたところ,明らかな活性酸素(reactive oxygen species)の誘導が認められた.その細胞内情報伝達経路の解析を行ったところ,ミトコンドリアおよび細胞内骨格が重要な働きをすることを見出した.したがって,脚延長という牽引負荷により一過性の酸素分圧の増加が起こり,これが細胞のアポトーシスを惹起する可能性が示唆された.
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