骨形成因子(bone morphogenetic proteins : BMPs)のシグナル伝達分子Smadはレセプターの刺激により、細胞質から核に移行し、標的遺伝子の転写活性を調節して機能を発揮することがわかっている。本研究は近年著しく進歩したマススペクトロメトリーやマイクロシークェンシング法を用いて、哺乳類細胞内でBMP特異型Smadと結合する蛋白質を微量で分離し、その同定をデータベースなどを用いて迅速に行うことを試みる。 今年度は、BMP特異型Smadに結合する新規蛋白のスクリーニングのために、まずSmadl/5/8のcDNAにFlagやMycなどのエピトープタッグをつけたコンストラクトを作製した。そしてCOS細胞においての発現をチェックし、十分かつ正確な発現量を確認した。次に、これらのコンストラクトを、BMPsによって骨芽細胞に分化する哺乳類の細胞株のひとつであるC2C12細胞にトランスフェクションした。種々の方法を検討した結果、C2C12細胞に対して30%以上のトランスフェクション効率を得る方法を見いだした。現在、C2C12細胞のstable cell lineの作製に着手している。 結合蛋白は、アガロースビーズなどに結合したFlagやMycなどの抗体を用いてSmad蛋白質を免疫沈降し、共沈する蛋白質を対照の細胞と比較し、特異的に共沈してくる蛋白質を同定することで得られる。基礎実験から、アガロースビーズなどに結合したFlagやMycなどの抗体を用いて蛋白質を免疫沈降する際の抗体のパックグラウンドが問題となることがわかった。そこで、抗体のバックグラウンドを減らす目的で、アガロースビーズと抗体のクロスリンクを行い、基礎実験を進めている。
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