骨形成因子(BMP)はTGF-βスーパーファミリーに属する因子であり、異所性に骨・軟骨を誘導するユニークな蛋白質として同定された。BMPは細胞表面の2種類のセリン・スレオニンキナーゼ型レセプターに結合し、細胞内のSmad蛋白質を活性化してそのシグナルを伝える。現在、特異型Smad、共有型Smadと抑制型Smadの3種類のSmadが知られている。BMP特異型SmadであるSmad1/5/8は活性化されたI型BMPレセプターに結合してリン酸化される。リン酸化Smad1/5/8は共有型SmadであるSmad4と複合体を形成し、核に移行し、様々な標的遺伝子の転写活性を調節している。一方、抑制型SmadであるSmad6/7は活性化されたI型BMPレセプターに恒常的に結合して、Smad1/5/8の活性化を阻害することでBMPシグナルを抑制している。 本プロジェクトでは、Smad結合蛋白質の1つSmurf1の機能を解析した。Smurf1は本来Smad1/5に結合するE3ユビキチンリガーゼとして同定されたが、我々はSmurf1が抑制型Smadを介してレセプターに結合し、それをユビキチン化分解することを明らかにした。よってSmurf1は単独で又は抑制型Smadとともに多段階にBMPシグナルを制御していることがわかった。 次に我々は、抑制型SmadとSmurf1の複合体の核外移行と細胞膜局在のメカニズムを解析した。その結果、CRM1がSmurf1の核移行シグナルを介して抑制型Smad-Smurf1複合体を核外に移行させることと、Smurf1のC2ドメインが両者の細胞膜局在に重要なことを明らかにした。
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