研究概要 |
DAN遺伝子は、ラウス肉腫ウイルスで形質転換させたSR-3Y1細胞で発現が著しく抑制されている遺伝子の一つである。また、アフリカツメガエルの発生過程で、BMPに対し阻害的に働く背側化因子としてDANファミリー蛋白質が複数報告されている。我々は、がん化抑制、骨芽細胞の分化過程におけるDANとBMPの相互作用の解析を進めている。これまで得られた結果、(1)DANとBMP2の結合能をin vitroにて免疫沈降/ウエスタン法により検討した。GSTとの融合蛋白質、GST/ratDAN(1-178アミノ酸)はBMP2との結合が認められたが、DANの1-80アミノ酸(システイン・ノットを一部欠いたタイプ)の場合はBMP2との結合は認められなかったことより、DANはシステインに富む領域を介してBMP2と結合している可能性が示唆された。(2)BMPシグナル伝達が知られているP19細胞(マウス胚性腫瘍細胞)を用いた系で、BMP2のシグナル伝達をDANがどのように制御しているのか検討を行った。P19細胞をBMP2処理(0.01nM,30分)するとBMP2シグナル伝達分子、Smad 1のリン酸化が認められる。この条件下で、細胞外に分泌されたDANあるいはGST/ratDANを培地中に添加しSmad1のリン酸化を調べたところ、現段階では優位な差は認められなかった。(3)マウス頭蓋冠骨芽細胞、MC3T3E1の細胞分化に伴うDANの発現をノーザン法およびウエスタン法にて調べたところ、培養6日後より骨分化の指標であるアルカリフォスファターゼ(ALP)の活性が上昇し、DAN発現の増加も認められた。また、MC3T3E1細胞にBMP2を添加するとDANの発現元進が一過性に認められた。DANノックアウトマウスより調整された初代培養骨芽細胞では、ALPの活性およびmincralizationが野生株に比べて抑制されていた。これらのことより、DANはBMP2を介した骨分化の制御に関与していることが推測された。
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