アフリカツメガエルの発生過程において、BMPに対して阻害的に働く背側化因子としてDANファミリー蛋白質が複数報告されている。我々は、がん化抑制および骨芽細胞の分化過程におけるDANとBMPの相互作用の解析を行った。DANとBMP2とのin vitroでの結合能から、DANはシステインに富む領域を介してBMP2と結合している可能性が示唆された。また、マウス頭蓋冠骨芽細胞、MC3T3-E1はアスコルビン酸存在下において、培養6日後より骨分化の指標であるアルカリフォスファターゼ(ALP)の活性が上昇し、このときDAN発現の増加が認められた。DANノックアウトマウスから調整された初代培養骨芽細胞では、ALPの活性およびmineralizationが野生株に比べて抑制されていた。従って、DANはBMP2を介した骨分化の制御に関与していることが推測された。一方、神経提細胞は交感神経節細胞と副腎随質細胞へと分化するが、そのプロセスを制御している因子の一つにBMPがある。交感神経節細胞と副腎随質細胞から発生する神経芽腫におけるBMPシグナル伝達を介した分子機構の解析を行った。神経芽腫細胞をBMP2処理するとBMPシグナルを仲介する分子の一つ、Smad1/5のリン酸化が認められた。このことから、神経芽腫におけるBMP2シグナル伝達経路の存在が示唆された。さらに、BMP2処理によって細胞の増殖速度は抑制され、神経突起の伸長が認められた。DAN発現を転写レベルで制御していると考えられるp73およびDANの発現はBMP2処理によって減少していることが判った。また、Cdkインヒビターであるp27^<KIP1>発現の増加、Cdk2活性の抑制が認められた。以上の結果から、神経芽腫細胞のBMP2による細胞増殖抑制および神経分化誘導はp27^<KIP1>の増加に関与していることが示唆された。
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