各種麻酔薬や軽度低体温には、脳保護効果があるとされている。昨今の研究では、その機序は代謝の抑制ではなく、他の何らかの機序が働いていると示唆されているが、その詳細は依然確定していない。本研究では胎仔ラット初代神経細胞培養系を用い、すなわち、実際の生物個体から得られた系を使用し、興奮性アミノ酸の代表であるグルタミン酸負荷による神経毒性に対するバルビタールや軽度低体温の保護効果について検討した。妊娠ラットから胎生14日程度の胎仔を取り出した。実体顕微鏡下に大脳半球を摘出し、トリプシンにより細胞を分散し、DF添加10%FBSを用いて培養ディッシュに播種し、神経細胞を培養した。培養7日後に、グルタミン酸50μMを30分負荷した。あわせて、バルビタールではペントバルビタール、サイアミラールを負荷、軽度低体温では33、29度の環境下で培養し、それらの効果を、負荷24時間後に細胞外に流出したLDH活性を測定することにより評価した。結果、グルタミン酸負荷により、細胞外に53%のLDHが流出、すなわち細胞傷害率は53%であった。臨床濃度のペントバルビタールならびに33、29度の軽度低体温は細胞傷害率を有意に低下させた。さらに蛍光顕微鏡(propidium iodide、Ho33342染色)による形態学的解析でアポトーシス細胞とネクローシス細胞のそれぞれの割合を計算した。グルタミン酸負荷により、全細胞数に対して22%のアポトーシス細胞、35%のネクローシス細胞を認めた。バルビタールではその比率に変化を生じさせなかったが、軽度低体温ではアポトーシス細胞の割合を有意に低下させた。以上より、軽度低体温の神経保護効果は、アポトーシス抑制によるものと推察された。
|