研究概要 |
各種麻酔薬や軽度低体温には、脳保護効果があるとされている。昨今の研究では、その機序は代謝の抑制ではなく、他の何らかの機序が働いていると示唆されているが、その詳細は依然確定していない。本研究では胎仔ラット初代神経細胞培養系を用い、興奮性アミノ酸の代表であるグルタミン酸負荷による神経毒性に対するバルビタールや軽度低体温の保護効果について検討した。妊娠ラットから胎生18日程度の胎仔を取り出した。実体顕微鏡下に大脳半球を摘出し、トリプシンにより細胞を分散し、神経細胞選択性が高いとされるB-27 supplement、N-2 supplement添加Neurobasal mediumを用い、神経細胞を培養した。6日後、37℃で50μMグルタミン酸に30分間暴露し、暴露後にバルビタールや軽度低体温負荷を行った。負荷24時間後に細胞外に流出したLDH活性を測定することにより保護効果を評価した。結果、軽度低体温(33,30度)は温度依存性に保護効果を認めたが、バルビタールには保護効果は認めなかった。一方、グルタミン酸負荷時のみ低体温を併用した群では、保護効果は認めなかった。さらに、軽度低体温の保護効果について、特にアポトーシスと関連しているとされる活性酸素産生とカスペース活性の2点から検討したが有意な結果は得られなかった。以上より、低体温は、グルタミン酸の直接的な作用ではなく、侵襲後に起こる経路の何れかを抑制することが示唆されたが、その経路を確定することは今回の検討では出来なかった。
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