麻酔関連薬剤の神経細胞アポトーシスに及ぼす影響の解析

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13671562
• 研究機関: 群馬大学
• 研究代表者: 齋藤 繁 群馬大学, 医学部, 講師 (40251110)
• キーワード: 局所麻酔薬 / 神経成長円錐 / 成長円錐崩壊 / テトラカイン / アポトーシス

研究概要

平成13年度は局所麻酔薬の培養神経細胞に与える影響について解析した。培養細胞は、末梢神経としての性格の強い、背側神経核初代培養細胞を使用した。これは、発生7日目のニワトリ胎児より摘出した細胞核を牛脳下垂体抽出物存在下に培養したもので、培養開始20時間後には、活発な運動能を持つ成長円錐を先頭にした神経突起の伸長を観察できる。局所麻酔薬は濃度依存的に成長円錐を崩壊させ、神経突起の伸長を阻害した。1mMを越える高濃度では、神経突起の形態も変化し、突起の細小化分断などが観察された。暴露後72時間では、培養皿への接着力を失い、剥離・変性に陥る細胞が多く観察された。1時間の暴露では、可逆的な変化と不可逆的な変化の双方が混在して観察された。しかし、可逆的な変化を見せた神経細胞も、一度形態を回復した後に再び形態変化へと至る場合が多く、この変化はアポトーシスによる神経細胞死の一段階であることを予測させた。中枢神経細胞の一種類と考えられる網膜神経節細胞層の培養により得られた神経細胞や傍脊椎交感神経節鎖より得られた自律神経系の神経細胞も、感受性の違いはあるが、高濃度の局所麻酔薬によって成長円錐崩壊および神経突起変性に陥った。これらの変化に及ぼす神経栄養因子の影響を検討したところ、NGFは保護作用を有していないものと考えられた。平成14年度以降は、他の栄養因子GDNF,BDNF,NT-3などの影響を検討する予定である。また、局所麻酔薬の種類別の効果比較もより詳細に検討する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Shigeru Saito, 他: "Direct Neurofoxicity of Tetracaine on Growth Cones and Neurites of Growing Neurons in vitro"Anesthesiology. 95・9. 726-733 (2001)
• [文献書誌] Hideaki Obata, Shigeru Saito, 他: "Antiallodynic Effect of Jutrathecally Administered 5-HT2 Agonists in Rats With Nerve Ligation"Pain. 90・1-2. 173-179 (2001)
• [文献書誌] Nara T., Saito S., 他: "A Rat Model of Postthracotomy pain : Behavicural and Spinal Cord NK-1 Receptor Assessment"Canadian Journal of Anaesthesiology. 48・7. 665-676 (2001)
• [文献書誌] Kadoi Y., Saito S., 他: "Decrease in Jugular Venous Oxygen Saturation During Normothermic Cardiopulmonary Bypass Predicts Short-term Postoperative Neurologic Dysfunction in Elderly Patients"Journal of American Colledge of Cardiology. 38・5. 1450-1455 (2001)
• [文献書誌] Radwan I., Saito S., 他: "High Concentration Tetracaine for the Management of Trigeminal Neuralgia : Quantitative Assessment of Sensory Function After Peripheral Nerve Block"The Clinical Journal of Pain. 17・4. 323-326 (2001)
• [文献書誌] Radwan I., Saito S., 他: "The Neurotoxicity of Local Anesthetics on Growing Neurons : A Comparative Study of Lidocaine, Bupivacaine, Mepivacaine, and Repivacaine"Anesthesia & Analgesia. 94(印刷中). (2002)