研究概要 |
昨年・一昨年の研究で、高濃度の局所麻酔薬が発生過程の神経細胞、特にその成長円錐部や神経突起部に強い障害を与え、一定時間の後には不可逆的な結果をもたらすことが証明できた。リドカインやテトラカインは比較的強力な作用を持ち、末梢神経細胞の細胞膜表面に受容体が発現している神経栄養因子GDNF,BDNF,NT-3により障害後の回復が促進される。本年度は、こうした回復促進作用をリドカインおよびテトラカイン以外の局所麻酔薬(メピバカイン、ブピバカイン、ロピバカイン)の毒性に対して検討した。 局所麻酔薬、メピバカイン、ブピバカイン、ロピバカインに暴露後の背側神経核初代培養細胞をモデルとして用いた。また、各栄養因子については、培養細胞に対する至適濃度が存在するといわれているので、栄養因子の濃度を変化させることにより、作用の程度を比較した。その結果、NGFを除く、3栄養因子に関して、局所麻酔薬暴露後の神経成長円錐崩壊阻止作用、再生促進作用が認められた。また、この作用は濃度依存的であった。 一方、神経成長円錐崩壊に細胞内カルシウム濃度の上昇が引き金になるといわれているので、局所麻酔薬暴露後の神経成長円錐崩壊においても、細胞内カルシウム濃度の上昇が見られれるかどうかを、細胞内カルシウム濃度測定用の蛍光色素Fura-2を用いて、測定した。その結果、局所麻酔薬暴露により、成長円錐部のカルシウム濃度が上昇することが観察された。成長円錐部での変化は神経軸索における変化のよりも時間的に先行した。また、カルシウムチャネルブロッカーは成長円錐崩壊の抑制に無効でり、イオンチャネルを介さない作用機序が示唆された。
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