研究課題/領域番号 |
13671564
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 二郎 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (90187203)
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研究分担者 |
沼田 勉 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (60189355)
西野 卓 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (80009703)
加藤 里絵 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助手 (60334207)
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キーワード | 循環作動薬 / 経頭蓋脳血流速計 / ドップラー法 / Critical closing pressure / 中大脳動脈 |
研究概要 |
本年度は体循環系、脳血管系、自律神経系に異常のない健康で比較的若い患者を対象とし、循環作動薬の脳血流調節に及ぼす影響を脳血管臨界閉塞圧(Pcrit)に着目して研究を始めた。プロポフォール・麻酔導入後に観血的動脈圧と経頭蓋ドップラー血流速計(TCD)による中大脳動脈血流速(FVMCA)を測定し、両者の波形関係から心拍ごとにPcritを算出した。脳血流調節に問題のないといわれる約20mmHgの範囲内で、フェニレフリンによる血圧上昇とニカルジピン、ニトロプルシッドによる血圧低下を起こしてその時の血圧、FVMCA、Pcritの相互関係を観察した。フェニレフリン、ニカルジピンによる血圧変動ではPcritは変化せず、したがって還流圧(血圧?Pcrit)は変動しているのに、FVMCAは一定に保たれた。これは上述の体位変換時の還流圧とFVMCAとの関係とは明らかに異なる。しかしニトロプルシッドによる血圧低下時には、全2剤と同様Pcritは変化しないが、FVMCAは還流圧に呼応するように低下した。これは体位変換時のFVMCAと還流圧との関係に似ている。一般に循環作動薬の脳血管への作用は血液脳関門(BBB)の通過性を基準にして論じられることが多いが、この予備研究の結果はこれには当てはまらない。フェニレフリンはBBBを通過しないが、ニカルジピン、ニトロプルシッドはどちらもBBBを通過するからである。また我々は二酸化炭素負荷による脳血流自動調節能の研究で、二酸化炭素負荷によりPcritは低下し、その分だけ上昇した還流圧によりFVMCAの増加を説明できることを示唆した。炭酸ガスによる脳血管拡張の主なメカニズムに一酸化窒素(NO)が介在することとニトロプルシッドの血管拡張の主要因がNOであることを考え合わせると、今回の結果が脳血流自動調節能の本質に迫りうることが示唆される。
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