【緒言】笑気とプロポフォールはそれぞれ脳血管拡張あるいは収縮と、反対の脳循環系への作用を持つ。我々は二酸化炭素負荷に対する動的脳血管反応に対する両麻酔薬の相互作用を検討した。【方法】全身状態に問題のない患者を2つの群に分けた。1群は30%酸素+70%笑気で麻酔し、その後プロポフォール(7-10mg/kg/h)を追加した。2群はプロポフォールで麻酔し、その後笑気を追加した。両群のそれぞれ二つの麻酔下で呼気終末二酸化炭素分圧(PETCO2)を30mmHgから50mmHgへ、そして50mmHgから3mmHgへとステップ状に変化させ、その時の中大脳動脈における血流速度(FVMCA)を経頭蓋的にドップラー流速計で連続測定した。PETCO2とFVMCAの関係を遅延時間、時定数、ゲインで性格付けられる数学的モデルに当てはめて笑気とプロポフォールの相互作用を検討した。【結果】プロポフォールを笑気に追加するとベースラインのFVMCAは減少するが、逆に笑気をプロポフォールに追加してもベースラインFVMCAは変化しなかった。笑気をプロポフォール麻酔に追加しても、あるいはプロポフォールを笑気麻酔に追加しても二酸化炭素負荷に対する中大脳動脈脳血流速の動的反応の時定数は増加したが、ゲインには影響しなかった。【まとめ】プロポフォールと笑気は、それぞれお互いに追加したとき、急激な二酸化炭素負荷に対する脳血管反応には似たような効果を示す。その相互効果はベースラインの脳血流量に依存することが示唆された。
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