研究概要 |
カリウムチャネルに対するガス麻酔薬亜酸化窒素(笑気)の作用を検索した。笑気は我々の灌流系で最大の濃度を得るために、バイアルにて100%笑気を溶解させ灌流投与した。その場合、解析の行われるバスでの笑気濃度をガスクロマトグラフィー法で測定し、平均約0.6atmの濃度が得られることを確認した。 電位依存性のカリウムチャネルである、ERG1、ELK1、KCNQ2/3チャネル、および内向き整流性のカリウムチャネルであるGIRK1、GIRK2、GIRK3、IRK1、ROMK1チャネルサブユニットのcDNAからmRNAを合成し、それをアフリカツメガエル卵母細胞に注入することにより、任意のサブユニットの組み合わせからなるカリウムイオンチャネルを細胞膜上に発現、再構成させた。電気生理学的測定により、電位依存性のカリウムチャネルの電流は10秒間隔で、2秒間の-80mVから+20mVへの膜電位ステップ刺激を与えることにより誘発し、また内向き整流性のカリウムチャネルは通常のリンゲル液からhigh K^+溶液(2mM NaCl,96mM KCl,1.5mM CaCl_2,1mM MgCl_2,5mM HEPES)に灌流液を交換することにより惹起される内向き電流応答を得て、それぞれに対する笑気の作用を解析した。その結果、笑気(0.6atm)は電位依存性のカリウムチャネルには全く作用しなかったが、内向き整流性カリウムチャネルの中で、GIRKチャネル(GIRK1/GIRK2、GIRK1/GIRK4、GIRK2チャネル)のみを軽度に(約10%)機能増強した。さらに、μオピオイド受容体刺激により活性化されたGIRK2チャネルを介する電流応答を笑気は約10%増強した。
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