昨年、および本年の結果より、GIRKチャネルとIRKチャネルの揮発性麻酔薬感受性の違いを担う部位を同定するために、GIRK2とIRK1サブユニット間での複数アミノ酸置換変異サブユニットを作成した。合成オリゴマーとPCR(Polymerase chain reaction)を用いた遺伝子工学的手法により、GIRK2サブユニットにおいて、特にチャネルの内壁を形成しチャネル機能に重要と考えられているポア形成領域と第二番目の膜貫通領域の複数アミノ酸をIRK1サブユニットの対応するアミノ酸に置換変異した(GIRK2-MC1からGIRK2-MC6変異体の作成)。第二番目の膜貫通領域のカルボキシル末端側の置換変異体であるGIRK2-MC5およびGIRK2-MC6サブユニットは単独で発現させた場合、通常のリンゲル液からhigh K+溶液に灌流液を交換することにより惹起される内向き電流応答を生じず、またGIRK1サブユニットと組み合わせて発現しても電流応答が認められなかった。電流応答を認めたGIRK2-MC1-4チャネルのハロセンとF3に対する感受性を検索した結果、これらの変異体チャネルはいずれも野生型のGIRK2チャネルと同様の麻酔薬感受性を示した。以上の結果より、GIRKチャネルとIRKチャネルの麻酔薬感受性の違いを担う部位はチャネルポア形成領域と第二番目の膜貫通領域のアミノ末端側領域には存在しないことが示唆された。しかし、第二番目の膜貫通領域のカルボキシル末端側に関しては検索不能であったため、関与の可能性は否定できないと考えられる。
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