電位依存性のカリウムチャネルであるERG1、ELK1、KCNQ2/3チャネルは、2MACの濃度の検索したすべての麻酔薬に対して抵抗性を示した。一方、内向き整流性カリウムチャネルの中で、G蛋白連関型のチャネルは揮発性麻酔薬により抑制されたが、静脈麻酔薬には影響されなかった。主に神経系に発現しているGIRK1/2およびGIRK2チャネルは2MACのハロセン、イソフルレン、エンフルレン、F3により抑制されたが、主に心筋に発現しているGIRK1/4チャネルはハロセン、イソフルレン、エンフルレンによってほとんど影響されず、F3によってのみ抑制された。一方、IRK1およびROMK1チャネルは検索したすべての麻酔薬に対して抵抗性を示した。したがって、内向き整流性カリウムチャネルの中ではG蛋白連関型チャネル、特にGIRK2サブユニット(神経型サブユニット)から構成されるチャネルが揮発性麻酔薬により選択的に抑制された。 亜酸化窒素(0.6atm)は電位依存性のカリウムチャネルには全く作用しなかったが、内向き整流性カリウムチャネルの中で、GIRKチャネル(GIRK1/GIRK2、GIRK1/GIRK4、GIRK2チャネル)のみを軽度に(約10%)機能増強した。さらに、high K^+溶液還流下でμオピオイド受容体刺激により活性化されたGIRK2チャネルを約10%増強した。 GIRK2とIRK1サブユニット間での複数アミノ酸置換変異サブユニットを用いた検索により、GIRKチャネルとIRKチャネルの麻酔薬感受性の違いを担う部位はチャネルポア形成領域と第二番目の膜貫通領域のアミノ末端側領域には存在しないことが示唆された。しかし、第二番目の膜貫通碩域のカルボキシル末端側に関しては検索不能であったため、この領域の関与の可能性は否定できないと考えられる。
|