研究概要 |
平成14年度は、平成13年度に引き続き神経因性疼痛モデルマウスを作成して行動学的および免疫組織学的検討を行った。動物モデルによる神経因性疼痛に関する研究は通常ラットを対象として行われてきた。我々は、遺伝子操作を施したノックアウトマウスを対象とすることを目的に、Malmbergらの報告(Pain 76:215-222,1998)をもとにStd : ddyマウスを対象に坐骨神経を9-0絹糸で部分結紮することにより神経因性疼痛モデルを作成した。このマウスはMalmbergら報告にみられるように時間経過とともにthermal allodyniaは消退するが、mechanical allodyniaは持続することがわかった。一方、坐骨神経切断モデルの脊髄では同側の後角を中心に、反対側までastorcyteの増生がみられることがあった。これは、glial cell line-derived nourotrophic factor(GDNF)が神経因性疼痛を抑制するというBoucherらの報告(Science 290:124-127,2000)およびいわゆるchemokineの一種であるfractalkineが侵害刺激によるglia細胞の活性化に関与しているというColorado大学Watkinsによる私信などを考え合わせると、侵害刺激のマーカーとして現在広く使われているc-Fos蛋白を発現するc-fos遺伝子の活性化とglia細胞の活性化が深くかかわっているのではないかと考え、現在神経因性疼痛モデルマウスを用いて検討中である。また、マウス胎児の脳から神経幹細胞を分離培養したneurosphereにさまざまな刺激を与えることでneuronおよびglia細胞に分化することがわかっている。このin vitroの系も神経細胞モデルマウスによるin vivoの系と平行して検討を開始したところである。
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