研究概要 |
平成15年度は、平成13、14年度に引き続き神経因性疼痛モデルマウスを作成して行動学的および免疫組織学的検討を行った。Malmbergらの報告(Pain 76 : 215-222, 1998)をもとにStd:ddyマウスを対象に坐骨神経を9-0絹糸で部分結紮することにより神経因性疼痛モデルを作成した。このマウスはMalmbergら報告にみられるように時間経過とともにthermal allodyniaは消退するが、mechanical allodyniaは持続することがわかった。一方、Schweiらは(J Neurosci 19 : 10886-10897, 1999)、がん性疼痛モデルにおいての脊髄でastrocyteの増生を報告している。また、われわれのMalembergモデルを用いた実験系においても、処置側にastrocyteが増生している傾向がみられた。これは、glial cell line-derived nourotrophic factor (GDNF)が神経因性疼痛を抑制するというBoucherらの報告(Science 290 : 124-127, 2000)およびいわゆるchemokineの一種であるfractalkineが侵害刺激によるglia細胞の活性化に関与しているというColorado大学Watkinsによる私信などを考え合わせるとglia細胞が神経因性疼痛の発現に関与している思われる。また、侵害刺激のマーカーとして現在広く使われているc-Fos蛋白を発現するc-fos遺伝子の活性化とglia細胞の活性化が深くかかわっているのではないかと考え、神経因性疼痛モデルマウスを作成日から経時的に評価して、c-fosとglia細胞とくにastrocyteとの関連が示唆された。
|