研究概要 |
1.左側迷走神経切断による神経原性肺水腫の発生抑制作用、中枢神経系NOの役割を検討した。 (1)神経原性肺水腫はラットの第4脳室内にFibrinogenとThrombinの投与によるフィブリン肺水腫モデルを用いた。ラットを対照群(肺水腫実験直前に両側迷走神経切断)と左側迷走神経切断群(左側迷走神経切断を肺水腫実験2週間前に行い、右側迷走神経は直前に切断)に分けた。さらに迷走神経切断群ではL-NAME,D-NAMEの第4脳室内前投与の影響を検討した。肺水腫抑制作用は肺水腫発生率と肺水分率で評価した。 (2)神経原性肺水腫の発生率は、対照群の100%に対し、左側迷走神経切断2週間後では22%に減少した。肺水分率も同様の傾向を示した。 (3)L-NAME第4脳室内前投与は、肺水腫発生率を100%に上昇させたが、D-NAMEの影響はなかった。 (4)以上より、左側迷走神経切断は2週間後にNOの作用を介して、神経原性肺水腫抑制作用を示すことが示唆された。 2.左側迷走神経切断の、延髄NOSに対する影響を検討した。 (1)対照群、左側迷走神経切断2週間後群のラットを用い、延髄でのbNOS,eNOS,iNOSに対する免疫染色を行った。延髄の孤束核,迷走神経背側核、疑核におけるbNOS陽性神経細胞が左側において右側より著明に増加した。eNOS,iNOSについては左右差が見られなかった。 (2)対照群、左側迷走神経切断2週間後群のラットを用い、左右両側の延髄からmRNAを抽出し、ランダムプライマーを使って得られたcDNAを用いてPCRを行った。bNOS mRNAの発現は右側延髄では、変化がなかったのに対し、左側延髄では増加が見られた。 (3)以上より、左側迷走神経切断が2週間後に同側の孤束核におけるbNOSを増加させて、神経原性肺水腫の発生を抑制した可能性が示唆された。
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