研究概要 |
平成13年度に、左側迷走神経切断が2週間後に同側の孤束核におけるbNOSを増加させて、神経原性肺水腫の発生を抑制した可能性が見出されたので、平成14年度は左側迷走神経切断4週間後の影響を検討した。 実験動物及び方法:神経原性肺水腫はラットの第4脳室内にFibrinogenとThrombinの投与によるフィブリン肺水腫モデルを用いた。ラットを対照群(肺水腫実験直前に両側迷走神経切断)と左側迷走神経切断群(左側迷走神経切断を肺水腫実験4週間前に行い、右側迷走神経は直前に切断)に分けた。 1.左側迷走神経切断4週間後の肺水腫の発生抑制作用を肺水腫発生率と肺水分率で検討した。 (1)神経原性肺水腫の発生率は、対照群の100%に対し、左側迷走神経切断4週間後では72%(統計学的有意差なし)であった。2週間後では22%と有意に低下したものが対照群に近い値にもどったと言える。 (2)肺水分率は両群間で差が認められなかった。ただし、肺水腫を発生したラットの肺水分量は対照群に比べて4週間後群では有意に増加し、水腫液中蛋白量の血清蛋白量に対する比率も同様の傾向であった。 2.左側迷走神経切断4週間後の、延髄NOSに対する影響を検討した。 (1)延髄でのbNOS, eNOS, iNOSに対する免疫染色を行った。4週間後では延髄の孤束核,迷走神経背側核、疑核のbNOS陽性神経細胞が左側で右側より極僅かに増加した。eNOS, iNOSについては左右差が見られなかった。 (2)左右両側の延髄からmRNAを抽出し、ランダムプライマーを使って得られたcDNAを用いてPCRを行った。bNOS mRNAの発現は右側延髄では、変化がなかったのに対し、左側延髄では4週間後に僅かな増加が見られた。 以上1.2.より、左側迷走神経切断は4週間後では、延髄のNOS発現に対する影響は軽微で、神経原性肺水腫の発生も抑制しなかった。
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