1.臨床研究 全身麻酔下に帝王切開術を施行された52例を対象に、術前のマグネシウム(Mg)およびβアドレナリン作動薬使用の有無と、サクシニルコリン(Sch)投与前後での血清カリウム(K)値の変化との関係を検討した。血清K濃度(mmol/L)は、Sch投与前後で、Mg長期群4.0±0.6、6.3±0.9、Mg短期群3.5±0.2、43±0.6、β作動薬のみ群3.7±0.4、4.1±0.9、対照群3.8±0.2、3.8±0.3であった。Mg長期群、Mg短期群、β作動薬のみ群でSch投与後に血清K値の有意な上昇が見られた。ケタミンとベクロニウム(Vb)を用いた麻酔の導入では、高K血症は見られなかった。また、Vbの作用持続時間と血中Mg^<2+>濃度との間には、正の相関関係が見られた。 2.動物実験 対象動物はラットを用い、最初に血中Mg^<2+>濃度の正常値と、正常の2倍、3倍のMg^<2+>濃度をもたらす硫酸Mgの投与量を求める。Mgは、あらかじめ皮下もしくは腹腔内に埋め込んでおいた持続注入ポンプからの持続皮下注もしくは持続腹腔内投与とした。持続注入ポンプから、生理食塩水、正常の2倍のMg^<2+>濃度をもたらす硫酸Mg溶液、3倍となる溶液の持続投与を2週間行い、その後これらのラットより対照となる血液を採取した後、Schの投与を行い、投与前後での血清電解質濃度の変化を検討し、ラットにおいてもSch投与後の高K血症が確認されたならば、さらに同様の実験系において、Mg持続投与後の神経筋接合部および筋組織自体の変化を組織学的に検討する計画であった。ラットにおけるMg^<2+>濃度の正常値を求めた後、種々の濃度の硫酸Mg溶液および他のMg化合物溶液にて、正常の2倍となるMg^<2+>濃度のラットモデルを作成しようと試みたが不可能であった。今回はラットを用いた高Mg血症モデルにおける種々の実験計画は断念せざるを得なかった。
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