低酸素性肺高血圧モデルラットは、ヒト肺高血圧の病態に酷似した組織変化を示すことが知られている。このモデルでのトランスクリプトーム(mRNA)の経時的変化を、我々が独自に作成したRat Lung Hypoxia Chipを用いてDNAマイクロアレイ法によりスクリーニング解析した。このChipはFluorescent Differential Display (FDD)にて低酸素により発現変化が認められたクローン、およびハウスキーピングジーン等、約200遺伝子を増幅し、スライドガラス上にスポットしたものである。DNAマイクロアレイ法は、スライドグラス上に多数の異なったプローブcDNAを高密度に張り付けたDNAチップを作製し、そこに蛍光標識したターゲットcDNAをハイブリダイズさせ、レーザー照射による蛍光強度を数値化し、ターゲット遺伝子の発現変化を解析する方法である。その結果、低酸素1日目に著明に上昇するパターンを示すものとして、tropoelastin、β-globin、低酸素3日目に著明に上昇するパターンとして、S-adenosylmethionine decarboxylase、collagen alpha 1 type I、低酸素7日目に著明に上昇するパターンとして、S100A9などが認められた。このように、Hypoxia response gene clusterを同定し、それぞれの経時的変化と役割を解析することによって、病態に関連する分子種について包括的な情報が得られた。
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