研究概要 |
全身麻酔薬の多臓器にわたる多彩な作用を説明するためには多くの細胞に発現しているKチャネルの麻酔薬感受性についての知見が重要である。このうちカルシウム依存性Kチャネルと過分極誘発型チャネルの麻酔薬感受性を検討することが本研究課題の目的である。 昨年度、麻酔薬に対する感受性の定量のためピエゾ素子を用いた高速薬物投与法を開発し、アフリカツメガエルの卵母細胞に発現したIK1の感受性をパッチクランプ法にて検討した。本年度はこの方法を用いてアルコールの報償作用に関与するチャネルの同定を試みた。 アルコールはVTAのドパミン神経の脱分極後過分極を抑制しその興奮性増加を介して報償効果をもたらすとされている。この脱分極後過分極を担っているカルシウム依存性KチャネルのうちSK1,2,3にはアルコール(オクタノール)は作用を示さなかったが、IKはEC50=24uMで著明な抑制が観察された。VTAのドパミン神経にIKが発現しているかなどまだ解明されなければならない点が多いが、この結果からアルコールの報償作用にIKが関与している可能性が示唆された。また揮発性麻酔薬の作用機序の解明の際用いたSK1とIKのキメラチャネルはいずれもオクタノールに感受性を示さず、オクタノールの感受性は揮発性麻酔薬と異なったドメインが関与していることが判明した。現在新たなキメラチャネルを製作中である。 過分極誘発型チャネルに関してはアフリカツメガエルの発現系で高発現が認められず、本研究のアッセイシステムの対象外であることが判明し、今後の検討課題として残った。
|