研究概要 |
揮発性全身麻酔薬の作用は神経系にとどまらない。多臓器にわたる多彩な作用を説明するためには神経細胞に限らず多くの細胞に発現しているKチャネルの麻酔薬感受性についての知見が重要である。このうちカルシウム依存性Kチャネルと過分極誘発型チャネルの麻酔薬感受性を検討することが本研究課題の目的である。 第一年度には揮発性麻酔薬に対する感受性の定量のためピエゾ素子を用いた高速薬物投与法を開発し、アフリカツメガエルの卵母細胞に発現したIK1の感受性をパッチクランプ法にて検討する系を開発した。第二年度には、この方法を用いてIK1について揮発性麻酔薬の感受性を同定した。インサイドアウトのパッチより、アウトサイドアウトのパッチの方が10倍早いことを見いだした。これにより揮発性麻酔薬が膜の外側の部分に作用することが判明した。また、過分極誘発型チャネルのうちHCN1と4のサブタイプのクローニングを行った。これらのチャネルをCOS-7細胞株で発現実験したところ、過分極によって誘発される内向き電流はHCN1ではHCN4に比較して約10倍早く活性化した。HCN1とHCN4との間のキメラチャネルを作りその活性化の時定数を定量すると、チャネルの活性化に重要な役割を果たしている領域としてS1,S1-S2,S6-cAMP結合部位までが同定された。過分極誘発型チャネルに関してはアフリカツメガエルの発現系で高発現が認められず、本研究のアッセイシステムの対象外であることが判明し、今後の検討課題として残った。
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