研究概要 |
本年度は基礎実験として成体から血管内皮前駆細胞を分離することを目標とした。ヒト末梢血からCD34抗体陽性細胞を免疫ビーズ法で単離し血管内皮特異的培地(EBM-2培地+VEGF+FBS+IGFなど)にて増殖させることにより血管内皮前駆細胞に分化・誘導することができた。血管内皮前駆細胞は形態的観察及ぴ内皮細胞の表面抗原(Flk-1,CD34,VEカドヘリン)の発現をフローサイトメトリーにて確認した。これらのデータは末梢血から血管内皮細胞を供給できる可能性を示している。肺胞上皮修復治療の基礎実験としてラット培養肺胞II型上皮細胞を用いフォスフォジエステラーゼIV阻害薬であるロリプラムの細胞増殖に与える影響をBrdU取り込み法とMTT改良法で評価したところ増殖因子(KGFやHGF)の存在下でも非存在下においても0.01〜1.0mmol/Lのロリプラムは肺胞II型上皮細胞の増殖を亢進した。一方、線維芽細胞の増殖に対しては影響しなかった。またARDSの病態における血管内皮前駆細胞の関与を明らかにするためにエンドトキシンによるラット急性肺傷害モデルとブレオマインン肺傷害モデルを用いて肺傷害の自然経過として血管内皮の傷害肺での動態を内皮細胞の表面抗原を免疫組織学的に検討して評価したところブレオマイシン肺傷害モデルでは血管の増殖が認められたがエンドトキシン肺傷害モデルではほとんどど認められなかった。今後、末梢血から得られた血管内皮前駆細胞をin vivo投与し肺における定着制御方法を検討したい。
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