長期にわたる機械的換気によって誘引される肺の損傷を防ぐ方法として低量換気法が注目されているが、本研究は、該法による肺の換気や循環の不全をできるだけ抑えるような換気条件を探索するために換気量や回数、PEEP圧などが肺の循環に如何なる影響を与えるかを検討するものである。 ウサギの環流肺を用いた予備実験で肺の循環動態を模擬する電気回路モデルはほぼ完成した。本格的なデータの採取に取り掛かった所である。一方で、肺の生理学的機能と病態との対応を検討すべく生理学的機能の指標として圧-流量(PV)曲線を測定している。ところがPV曲線は換気効率を上げるためのPEEP圧を求めるのに利用されているが、例えば、適正圧の指標としてLIP(Lower Inflection Point)、その検出方法も確立されていないのが現状である。 そこで、PV曲線の評価方法を確定すべく以下の推論の元にラットを用いて確認実験を行った。その推論とは、そもそも10の8乗個あるとされる肺胞の一つ々を見ると、弾性など物理的性状は、形態学的には肺胞位置によって若干の差はあると思われるが、大数的に正規分布を示すと考えても差し支えばないだろう(張力などを反映した実測体積は圧力に対して正規分布を示す)。ここで、物理学法則に以下に示した連続の方程式がある。 ∂ρ/∂t+∂(vρ)/∂x=0(ρ:密度、v:x方向の速度) つまり、ガスが圧縮性の気体であると体積分布は圧力の対数に対しては正規分布となり、非圧縮性気体のときは圧力そのものに対して正規分布を示すことになる。したがってPV曲線を正規確率紙と対数正規確率紙とに描いた場合、いずれもある点を境に直線から曲線に移行する。その点がLIPである。ラットを用いた実験ではこの論理が成立することを確かめた。現段階ではウサギを用いて実験を行っている。
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