哺乳類は2心房2心室に進化することによって肺における脈流循環を獲得し、酸素化機能を向上させ、捕食活動を有利にすることができた、と考えることができる。本研究は、肺はウィンドケッセルモデルで説明されている脈流の利点に留まらず、さらに効率化した形質を有しており、すなわち、エネルギー損失を抑えるための交流の直列、並列共振現象に相当する仕組みを有する器官である、との仮説の下に肺循環を電気回路モデルで具現化することよって検討した。 家兎摘出還流肺を対象に抵抗素子(流量抵抗、流速抵抗、容量抵抗)を用いた電気回路モデルに肺循環特性を適合させると、当初想定していた電気回路モデルと異なり、最尤のモデルはLandesとGoldwyn-Wattの報告を合成したモデルであった。このモデルは中枢側と末梢側を模しており、しかも交流の利点である直列、並列共振回路を有しており、中枢側はflow leadで末梢側はpressure leadで循環量を維持するシステムと解釈され、エネルギーの有効利用が行われているのではないかと推察された。 また、肺の生理学的機能を表す指標である圧量曲線について検討した。すなわち、多数の肺胞からなる肺の肺胞容積の度数分布は大数的に正規分布を示すと考えられる。一方、物理法則の連続の方程式を考えると、肺のような外部圧を受ける中空球の場合、一様圧縮過程と圧縮性の気体のときの解が考えられる。つまり気体については圧力すなわち密度であるから圧縮性気体の場合の圧力は対数表記しなければならなく、したがって動的測定による肺胞体積分布は対数正規分布になる。対数軸に対して累積相対頻度を描くと二つの直線になることになる。変曲点がLIP(Lower Inflection Point)と解釈される。以上を検証することができた。
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