研究概要 |
先行虚血,あるいは揮発性吸入麻酔薬の心筋保護効果にミトコンドリアのATP感受性K(mito K_<ATP>)チャネルが重要な役割を果たすと考えられている。我々の研究目的は,mito K_<ATP>チャネル活性に及ぼす,プロポフォール,リドカイン,およびメキシレチンの影響について検討するとともに,先行虚血の心筋保護効果にmito K_<ATP>チャネルがどの程度関与しているかを検討することである。[方法]ラットの心臓をランゲンドルフ法にて灌流し,酵素灌流法により単一心筋細胞を取り出した。蛍光顕微鏡を使用しミトコンドリアのフラボプロテイン酸化蛍光を測定することにより,ミトコンドリアの酸化反応の指標とした。プロポフォール,リドカインおよびメキシレチンのmito K_<ATP>チャネル活性に対する作用を検討した。また,2,4dinitrophenol(DNP,ミトコンドリアでのATP合成阻害薬)で標本を還流し,心筋虚血モデルとし,5分間の先行虚血,10分間の再還流後,15分間虚血した群(先行虚血郡)と先行虚血なしで15分間虚血した群(対象群)とでmito K_<ATP>チャネル活性を比較検討した。[結果]25μMジアゾキシド(mito K_<ATP>チャネル選択的開口薬)の添加によりフラボプロテイン自家蛍光はDNP値の63±19%(n=7)まで増強した。プロポフォール,リドカイン,およびメキシレチンは濃度依存性にジアゾキシドより誘導したフラボプロテイン自家蛍光を抑制した。また,50%抑制濃度(EC50値)はそれぞれ14.6μg/ml (n=9),98±63μM (n=7),107±42μM (n=7)であった。また,対象群では15分虚血後にK_<ATP>チャネル活性がbaseline値に比較して188±45%増加したのに対して,先行虚血群では252±51%増加した。
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