研究概要 |
ラット一過性肝虚血モデルを用いて肝不全を作成し、24時間後の脳内神経伝達物質であるドパミンとセロトニンの細胞外濃度の変化を検討した。肝障害の程度を血漿中の肝逸脱酵素で検討した。これらのパラメータにおよぼすアミノ酸投与の影響を調べた。 ラットを亜酸化窒素とイソフルランで麻酔して開腹した。左門脈と肝動脈にクリップをかた。閉復して脳定位固定装置で右線条体に1mmのマイクロダイアリシスプローブを挿入した。再び開腹してクリップをはずして血流を再潅流させた。虚血時間は90分にした。閉復後、麻酔から覚醒させてリンゲル液をプローブに灌流させた。1時間後、6時間後、24時間後の回収液中のドパミンとセロトニン濃度を高速液体クロマトグラフィーで定量した。24時間後に血液を採取し血漿中の逸脱酵素を定量した。これらの値におよぼす8%アミノ酸溶液(ロイシン、バリン、イソロイシン)腹腔内投与(10mL/kg)の効果を検討した。実験群として偽手術+生食投与群(対照群)、肝虚血+生食投与群(虚血群)、肝虚血+アミノ酸投与群(アミノ酸群)の3群を用いた。 肝逸脱酵素であるGPTは、対照群、虚血群、アミノ酸群でそれぞれ48±20、5861±2643、1624±2497 IU/L(各n=6)であった。24時間後のマイクロダイアリシスによる回収液中のドパミン濃度は、それぞれの群で0.4±0.3、0.3±0.0、0.5±0.3μg/Lと各群間に差がなかった。セロトニン濃度は0.7±0.3、1.5±1.4、0.4±0.2μg/Lで,虚血群で亢進傾向がみられたが、有意差はなかった。 肝不全によって脳のセロトニン神経活動が亢進する傾向が認められ、アミノ酸投与で正常化した。セロトニン神経活動の亢進は肝性脳症の一要因であると考えられているので、アミノ酸投与は肝性脳症を正常化する一つの方法であると示唆される。
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