研究概要 |
前年度,SDラットにおけるテイルフリックテストを用いて急性痛に関する研究を行い,μオピオイドアゴニストである[D-Ara2,N-Me-Phe4,Gly-ol5]-Enkephalin(DAMGO)およびκオピオイドアゴニストであるU69598を下行性疼痛抑制系の中の延髄吻側腹内側領域(RVM)や中脳水道灰白質(PAG)へ投与したときに雌雄における疼痛反応の違いを認めた.また,雌雄において薬剤を投与しないときのμオピオイド受容体(MOR)やMet-,Leu-Enkなどの脳内の分布を免疫組織化学的に調べて差が認められないことを認めた.今回,実際に急性実験でのDAMGOおよびU69598を投与後の脳内でのこれらの分布を調べたが,明らかな性差を認めることはできなかった.また,μオピオイド作動薬,κオピオイド作動薬でみられたテイルフリックテストでの雌雄の反応の差は,ノシセプチン(OFQ)やδオピオイド作動薬では,はっきりとは認められなかった.カナビノイド受容体作動薬(WIN55,212-2)は下行性疼痛抑制系に投与した際に鎮痛効果を雄のラットではテイルフリックテストにおいて認めたため,現在雌において研究中である.また,現在,雄のLong Evansラットを用いて,正常ラットおよび慢性疼痛モデルとして坐骨神経紋扼ラットを作成し,conditioned place preference (CPP)法を用いて,DAMGOやWIN55,212-2を投与した場合にpreferenceを示すかどうか,また慢性的にこれらの薬剤を投与したときに耐性が生じるか,免疫組織化学的に脳内での特に下行性疼痛抑制系や脳内報酬系でのMORやenkephalineなどの分布がどのように変化するかについて調べている.さらに雌のラットを用いて同様の研究を行い雌雄に性差が見られるか研究予定である.
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