研究概要 |
<目的> 癌性疼痛へのモルヒネの使用は、疼痛緩和によるQOLの向上が主たる目的である。しかし、近年モルヒネは疼痛抑制作用のみでなく、癌細胞に対する直接抑制効果をもつ可能性が示唆されている。すなわち多くの組織臓器にオピオイドレセプターが存在し、高濃度モルヒネはそれらの組織細胞にFasタンパクを発現させアポトーシスに向かわせるという報告がある。臨床的にモルヒネと抗癌剤の併用は稀ではないが、その相互作用についての報告はない。モルヒネには癌細胞増殖抑制作用があり、抗癌剤とは相加的または相乗的作用があると仮説をたてる。そしてモルヒネによる癌細胞増殖抑制、ならびに、抗癌剤との併用時、モルヒネが抗癌剤に及ぼす影響を明らかにする。 <方法> ヒト乳癌培養細胞2株(MCF-7,MDA-MB-231)を培養し、24時間後、培地中にモルヒネ、および抗癌剤(CDDP, VP-16, Docetaxel, 5-FU, Cyclophosphamide)を添加した。モルヒネ、および抗癌剤の細胞増殖抑制作用をcolony formation assayで測定し、モルヒネと抗癌剤の相互作用については、Isobologramより検討した。 <成績> モルヒネはMCF-7およびMDA-MB-231の増殖を濃度依存性に抑制した。50%増殖抑制(IC50)はMCF-7では726microM、MDA-MB-231では931microMであった。Isobologramにより解析したモルヒネと抗癌剤の相互作用は、いずれの薬剤に対しても、相加的と判定された。 <結果> 高濃度のモルヒネはヒト乳癌培養細胞の増殖を直接抑制し、抗癌剤とは相加的作用を示す。 2002.3.8 第35回制癌剤適応研究会(名古屋)で発表予定である。また2002.4.19 第49回日本麻酔科学会(福岡)でも発表予定である。 また現在、モルヒネ耐性株を確立し、その抗癌剤の耐性変化を測定中である。
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