研究概要 |
1.脊髄半切モデルにおける脊髄後角ニューロンの特性変化 (1)Christensenらの方法(Pain 1996;68:97-107)を一部改変し,脊髄半切による脊髄損傷(Spinal Cord Injury:SCI)を行った.脊髄半切後,足底部,腰部における痛覚過敏を術後14日まで観察した.術後3〜4日目より痛覚過敏が観察され,14日まで持続した. (2)損傷部より頭側(Above : A),尾側(Below : B)の脊髄後角ニューロン活動を単一細胞外記録で導出し,自発発射,非侵害・侵害性機械刺激に対する応答を記録・解析した.Aニューロンは他部位のニューロンより頭側に受容野を有したものの,足底に受容野を持つニューロンも存在した.自発発射はすべてのニューロンで増強しており,Aニューロンの一部ではburst発射を認めたが,Bニューロンでは認めなかった.非侵害・侵害刺激に対する応答はA, Bすべてのニューロンで増強していたが,Bニューロンの反応性がAニューロンより増大していた.以上よりA, Bニューロンともに,コントロールに比べて自発発射,刺激に対する応答が増加していたが,その増加パターンにそれぞれ特徴があり,異なった機序によるものと示唆された.一方,A, Bニューロンの皮膚受容野が同一皮膚分節に混在しており,知覚鈍麻部位の落痛にも,SCIより尾側の痔痛機序だけでなく,頭側の異なった機序が混在して応痛の形成に関与していることが示唆された. 2.脊髄後角ニューロンのモルヒネに対する反応 (1)脊髄後角のSCIより頭側(A)と尾側(B)ニューロン活動のモルヒネ全身投与による変化を検討した.コントロール(SCIなし)に比べ,A, Bニューロンともにモルヒネによる抑制作用は現弱していた.しかしAとBニューロンを比べた場合,BニューロンがAニューロンに比べ,有意にモルヒネに対して抵抗性を示した.
|