ほ乳類の免疫担当細胞が細菌DNAに高頻度に存在するCpG motifとよばれる特定の6塩基配列を認識し、これがseptic shockなどの原因物質の1つであることが報告されている。本研究はCpG motifによる炎症反応において、これを抑制する方法について考察し、SIRSを含めCpG motifによる炎症性疾患の新たな治療法を確立しようとするものであった。 まず、ほ乳類DNAはCpG motifを含むにも関わらず炎症反応を起こさないことから、ほ乳類DNAにはCpGによる反応を抑制する塩基配列が含まれているのではないかと考えた。ほ乳類DNAは、細菌DNAによる炎症反応、CpG motifを含む合成した短塩基(CpG ODN)による炎症反応を抑制することが確認された。これに基づき、報告されているCpG motifによる炎症反応を抑制する塩基:抑制性塩基配列について検討した。抑制性塩基配列は、ほ乳類DNAと同様に用量依存性にCpG ODNによる炎症反応を抑制した。次にその機序について検討した。RAW264.7cellにおいて抑制性塩基配列は、転写因子NF-κB活性化を抑制し、これによりmRNA誘導が低下した。次に炎症反応カスケードにおいて中心となるTNF-α産生について検討した。抑制性塩基配列は細菌DNAによるTNF-α産生を抑制した。なお、抑制性塩基配列の、細菌DNAによるLPSに対する炎症反応の増強に対する作用、細菌感染に対する作用、副作用については今後検討する必要がある。この研究の進行中にも、遺伝子治療に伴う炎症反応、SLEなどの自己免疫疾患、感染後にみられる無菌性関節炎、無菌性髄膜炎等、細菌感染やSIRS以外の疾患でもCpG motifがその原因となることが明らかになってきた。CpG motifによる炎症反応の抑制/制御は、こうした様々な病気の治療につながる可能性がある。
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