本研究の目的は水チャンネルであるアクアポリン(AQP)の調節機構を解明することにより、AQPの関与する脳浮腫発生機構の解明と新しい治療法確立を目指すものである。 平成13年度は、1.中枢神経系培養細胞におけるAQPファミリーの発現分布、2.AQP結合分子の検索、以上2点であった。 平成14年度の研究目標は、1.低酸素負荷による培養細胞内のAQPファミリーの発現変化、とし、より臨床に近づいた研究を行った。また、2.AQP発現の生理的調節機構、についても検討し、病的状態におけるAQP調節機構を理解する一助とする。 1.酸素負荷による培養細胞内のAQPファミリーの発現変化 脳浮腫の初期変化はアストロサイト(Ast)の膨化である。そこで培養Astに低酸素負荷を行い、AQP4、AQP5、AQP9の発現変化を検討した。AQP mRNAの変化はRT-PCRにより、AQP蛋白質の変化はウエスタンブロットで行った。その結果、低酸素・再酸素化によりいずれのAQPも発現が上昇することが分かった。このことは、脳浮腫の発生あるいは治癒過程にAQPが関与している可能性が示唆された。 2.AQP発現の生理的調節機構 培養Astにおける、protein kinase A (PKA)とPKCによるAQP4、AQP5、AQP9の発現調節を詳細に検討した結果、複雑な調節が行われていることがわかった。 以上、AQPの脳浮腫への関与、ならびに生理的な調節機構がin vitroで理解できた。 来年度は、実験動物脳損傷モデルを用いて、in vivoにおいてAQPが脳浮腫へ果たす機能を解明し、新しい脳浮腫治療法の発見への一歩を踏み出したい。
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