III型外毒素分泌機構に対する特異的抗体を用いた緑膿菌性肺炎及び敗血症治療法の開発

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13671604
• 研究機関: 京都府立医科大学
• 研究代表者: 志馬 伸朗 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (00260795)
• 研究分担者: 橋本 悟 京都府立医科大学, 医学部, 助教授 (90167578)
• キーワード: 緑膿菌 / 肺炎 / 敗血症 / 特異的抗体 / 治療 / 外毒素 / ショック

研究概要

本年度は緑膿菌外毒素分泌システム構成蛋白PcrVに対する特異的抗体療法の緑膿菌感染症に対する治療的効果についての検討を行った。多クローン性特異的抗体を、組み替えPcrV蛋白を用いたワクチン接種によりウサギを用いて作成した。抽出した抗PcrV抗体を、毒性の強い緑膿菌株PA103を肺胞内投与することにより作成したウサギ緑膿菌性肺炎・続発性敗血症モデルに治療的に投与した。全身麻酔・調節呼吸下のウサギの左肺内に致死量の30倍量のPA103を直接注入し実験的肺炎を惹起させ、肺胞内トレーサー(_<131>I標識アルブミン)の血管内移行、肺内水分量、湿乾重量比により肺胞上皮の傷害程度を評価した。緑膿菌感染症により上記の指標は著明に増加し極めて重篤な肺障害が生じる。これは非特異的コントロール抗体の投与では変化がなかったのに対し、抗PcrV抗体の投与によって肺障害の程度は有意に改善した。血中の緑膿菌定量、及び敗血症の病態形成に重要な炎症性サイトカインであるTNF-aは、緑膿菌肺内投与により有意に増大し、重篤な菌血症、敗血症を示すが、これに対しても抗PcrV抗体の投与のみがその上昇を抑えた。さらに血管内カテーテル法を用いた各種循環動態パラメータ(動脈圧、心拍出量)測定と過剰塩基の測定から全身酸素代謝、敗血症性ショックの重症度を定量したところ、抗PcrV抗体の投与によってのみ敗血症性ショックの合併が防止できた。以上より、極めて臨床病態に酷似した緑膿菌性肺炎と続発性敗血症・敗血症性ショックモデルにおいて、抗PcrV抗体の投与が敗血症症候群の病態を有意に緩和し、治療的効果があることが判明した。一方、この結果から緑膿菌の毒素分泌システムに対する抗体療法を含めた治療介入が、緑膿菌感染症患者の予後を改善する戦略になりうることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Shime N, et al.: "Bilateral transient radial nerve palsies in an infant after cardiac surgery"Can J of Anesth. 48(2). 200-203 (2001)
• [文献書誌] Shime N, et al.: "The application of modified sequential organ failure assessment(m/SOFA)score in children after cardiac surgery"J Cardiothorac Vasc Anesth. 15(4). 463-468 (2001)
• [文献書誌] Shime N, et al.: "Arterial ketome body ratio (AKBR) for the assessment of the severity of illness in pediatric patients following cordiac surgery"J Crit Care. 16(3). 102-107 (2001)
• [文献書誌] Shime N, et al.: "Therapeutic administration of anti-PcrV F_<(aid)2> in sepsis associated with Pseudomouas aeraginosa"J Immunol. 167(10). 5880-5886 (2001)
• [文献書誌] 志馬 伸朗, 他: "小児開心周術期における血中乳酸濃度による重症度評価"麻酔. 50(7). 752-757 (2001)
• [文献書誌] Shime N, et al.: "Specific antibody therapy to psendomouas PcrVis effective to prevent sepsis/septic shock associated with pseudomouas aeruginosa pneumonia"Am J Resp Crit Cave Med. 163(5). A25 (2001)