研究概要 |
脳虚血後の長期的予後に関する報告は見られるが、脊髄虚血後の時間的経過に関する報告は少ない。今回我々は、ラット脊髄虚血モデルで再還流後14日までの運動機能と神経細胞障害め経時的変化を検討した。虚血時間6,8,10分の3群とsham手術の計4群に割り当てた(n=139)。イソフルラン吸入下で尾動脈左内頸動脈にPE50,60カテーテルを,左大腿動脈から2F Fogartyカテーテルを挿入した。ヘパリン投与後バルーンの膨張と内頸動脈の脱血で尾動脈圧15mmHg以下とした、虚血後カテーテルを抜去しプロタミンを投与して閉創した。この間直腸内と傍脊椎に体温計を留置し、36.5-37.5度で維持した。また処置後3時間体温を計測し適宜冷却加温した。下肢の運動機能は再還流後3,24時間と2,7,14日目にBBBスコア(21点法)を用いて評価した。組織学的検討のために2,7,14日目にサイオペンタールを投与後ヘパリン加生理食塩水、緩衝化パラホルムアルデヒドで灌流して脊髄を取り出し第4腰髄をパラフィン固定した。HE染色した標本を光学顕微鏡で検鏡し形態異常のない細胞をカウントした。またTUNNEL染色で陽性細胞も計測した。虚血時間を延長すると運動機能は悪化し、死亡率も上昇した。この悪化は6,8,10分の全ての群で経時的に改善した。組織学的には小型から中型の正常ニューロン数は虚血時間の延長で減少した。しかし,どの群も2と7,14日自に有意な変化は認めなかった。TUNEL陽性細胞は2日目に最大で7,14日ではほとんど認めなかった。ラット脊髄虚血モデルにおける14日間の観察では運動機能、神経細胞障害とも遅発性の悪化は認めないことが判明した。
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