研究概要 |
脊髄虚血モデル後の組織学的検討として主に灰白質傷害のみが検討されてきたが、近年、白質傷害についての報告が散見される。我々はラット脊髄虚血モデルを用いて、白質傷害の程度、白質傷害と運動機能・灰白質傷害との関係について検討した。対象は雄性SDラット24匹。脊髄虚血は2Frフォガティカテーテルによる下行大動脈の閉塞と脱血により行った。Sham群(n=8)と虚血時間により虚血12分群(n=8)、虚血15分群(n=8)に分類した。運動機能の評価は再灌流24時間後にBasso, Beattie, Bresnahan(BBB)スコア(21点法)を用いて行い、組織学的検討はL4脊髄切片のHE染色を行った。灰白質傷害として前角の正常神経細胞数を計測し、白質傷害として、前・前側索、錐体路(後索)の空胞化の割合の合計を算出した。また軸索損傷の指標とされるAPP(amyloid precursor protein)に対する抗体を用いた免疫染色を行った。白質傷害はsham群0%(0-0:median,25th-75th)、虚血12分群14%(3-18)、虚血15分群27%(20-29)と虚血時間の増加とともに有意に増加し(p<0.05)、白質傷害とBBBスコアおよび正常神経細胞数の間に有意な負の相関が認められた(p=0.0013,p=0.0011)。APP免疫染色は錐体路に最も蓄積が認められた。脊髄虚血による白質傷害の程度は虚血時間の増加とともに増大し、灰白質傷害や運動機能低下と相関していた。今後、神経保護薬の効果などの判定に、白質傷害の程度も検討する必要がある。
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