研究概要 |
脊髄虚血モデル後の組織学的検討として主に灰白質傷害のみが検討されてきたが、近年、白質傷害についての報告が散見される。我々はラット脊髄虚血モデルを用いて、白質傷害の程度、白質傷害と運動機能・灰白質傷害との関係について検討した。運動機能の評価は再灌流24時間後にBasso, Beattie, Bresnahan(BBB)スコア(21点法)を用いて行い、組織学的検討はL4脊髄切片のHE染色を行った。灰白質傷害として前角の正常神経細胞数を計測し、白質傷害として、前・前側索、錐体路(後索)の空胞化の割合の合計を算出した。また軸索損傷の指標とされるAPP(amyloid precursor protein)に対する抗体を用いた免疫染色を行った。白質傷害は虚血時間の増加とともに有意に増加し、白質傷害とBBBスコアおよび正常神経細胞数の間に有意な負の相関が認められた。APP免疫染色では前及び前側索にAPPの沈着が認められた。また、脊髄虚血モデルにおける各種薬物の灰白質と白質の傷害に及ぼす影響を比較検討した。低濃度キシロカインでは灰白質と白質とも改善効果は認められなかった。デルタオピオイドであるSNC80のくも膜下投与は灰白質と白質とも傷害を改善した。今後、神経保護薬の効果などの判定に、白質傷害の程度も検討する必要がある。
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