[研究実績]1)くも膜下出血後は、チトクロームP450によって生成される脳血管収縮物質である20HETEの産生の増加が引き起こされることが濃度測定の結果で明らかになり、特異的阻害薬170DYAはくも膜下出血後の20HETEの産生を抑制した。2)くも膜下出血後に生じる急性脳血流の低下(急性脳動脈スパズム)は、20HETEの特異的阻害薬である170DYAの前投与で抑制されることが示された。さらに脳血管拡張物質であるEETsの産生をやや増加させる阻害薬を用いると、くも膜下出血後に生じる急性脳血流の低下(急性脳動脈スパズム)が抑制されたことにより、EETsの増加(血管拡張)が治療手段として有効であることが示唆された。3)チトクロームP450の脳血管内分布は部位によって異なっていることが確認された。とくに脳底動脈はEET合成酵素の分布が濃厚でスパズムをおこしにくい可能性が示唆された。[まとめと今後の展望]くも膜下出血後には脳血管拡張物質であるEETsの産生低下と脳血管収縮物質である20-HETEの産生の増加がおこると思われ、急性脳動脈スパズムの成因の一つと考えられる。この2つの血管作動物質の量を薬理学的に調節してやることができれば、くも膜下出血後の脳血管スパズム予防・治療に貢献する可能性が示唆された。今後はこの結果を利用して、慢性脳動脈スパズムモデルでの実験の試行、安定したEET化合物の脳組織内への直接投与の効果の研究を行う予定である。
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