ミトコンドリア膜電位の観察 初代培養神経細胞を用いて無グルコース、無酸素による実験的虚血状態を作るモデルを作成した.このモデルを用いてミトコンドリア膜電位の変化を電位依存性色素(JC-1)を用いて、レーザー顕微鏡および蛍光顕微鏡下に観察した.その結果、30分の実験的虚血後にはミトコンドリア膜電位は脱分極しているが、その後、再酸素化により再分極し、さらに過分極することが示された。しかし、60分虚血では再酸素後、再分極するものは少なくなり、90分虚血では神経細胞は膨化し、再酸素化後には、再分極するものは見られなかった. ATP量の測定 96穴プレートに初代培養神経細胞を植え、ミトコンドリア膜電位の観察と同様の実験的虚血条件を作成した。各条件でのATP量をluciferin-luciferase反応にてルミノメータにて定量した。その結果、30分の実験的虚血ではATP量は保存されており、過分極が起こっている状況でもATP量には変化は見られなかった.一方、60分、90分虚血後では、ATPはほとんど残っていなかった。これらのATP定量は、同時にガラス窓つき96穴プレートにてJC-1による蛍光観察も行い、膜電位の変化も同様に起こっていることを確認した。以上の結果より、ミトコンドリア膜電位の脱分極はATPの枯渇を示すものではないが、膜電位が再分極するのはATPの残存量に依存するものである事が示唆された. 平成14年度は、これらの結果をさらに確認し、虚血時のミトコンドリア膜電位とATP量の関係を明らかにしていきたい.
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