研究概要 |
本年度は平成13年度に行った2種類の麻酔薬、すなわちイソフルランとプロポフォールの肝虚血-再灌流障害に対する影響について10月に開催された米国麻酔学会年次総会において発表した(Y Kotake et al. The effect of ishcemic-proconditioning is modulated by choice of anesthetics in a rabbit model of hepatic ischemia-reperfusion : isoflurane versus propofol Anesthesiology 2002;97 Suppl A-94)。さらにセボフルランに関しても検討を加えた。この結果、イソフルランと同様の結果を得、麻酔薬によるpreconditioning効果は、揮発性麻酔薬に広く認められることが明らかとなった。また、心臓においては麻酔薬によるpreconditioning効果の機序としてPotassium-ATP channelの関与が注目を集めているが、肝虚血-再灌流の際のpreconditioning効果に同チャンネルが関与しているかどうかに関して検討を加えた。具体的には前年度の研究方法に準じて、日本白色種家兎30羽を、全身麻酔下に肝臓の片葉阻血60分を負荷した。これらの家兎を3群に分け、それぞれ対照群、Potassium-ATP channel開口薬であるnicorandil投与群、Potassium-ATP channel阻害薬である5-HD(5-hydroxydecanoate)投与群とした。Preconditioningによる保護効果の評価法としては、前年度と同様に超音波Doppler法による門脈+肝動脈血流量、水素クリアランス方式による肝組織血流量、および再灌流後3時間での血清AST, ALT, ADHおよびglalactose clearanceによる肝細胞機能の評価を用いた。本実験の結果、予想に反して、Potassium-ATP channel開口薬であるnicorandil投与は肝虚血再灌流においてpreconditioning効果を示さないことが明らかとなった。 これらの実験結果は2003年5月に開催される日本麻酔科学会月術集会およぴ10月に開催される米国麻酔学会年次総会において発表予定である。
|