研究概要 |
本研究においては腹部臓器、特に肝臓におけるischemic preconditioning効果の有無と麻酔薬の関連およびATP依存性カリウムチャンネル活性化の及ぼす役割について検討を加えた。なぜならば心筋虚血に関しては上記2つの過程が保護的に作用することが既に示されているが、肝臓に関しては明らかな結論が出ていないためである。研究者らは研究期間中に、家兎を用いた部分的肝虚血-再灌流モデルを確立し、肝臓におけるischemic preconditioning効果の有無、麻酔薬による保護作用(いわゆるanesthetic preconditioning)、およびATP依存性カリウムチャンネル活性化の寄与について検討した。その結果、揮発性麻酔薬isofluraneは静脈麻酔薬propofolよりも有意に強いanesthetic preconditioning効果を示すことが明らかとなった(Am Soc Anesthesiologists, annual meeting A-94,2002)。また肝臓においては心筋と異なりnicorandilによるATP依存性カリウムチャンネル活性化が有意な保護作用を示さないことが明らかとなった(Am Soc Anesthesiologists, annual meeting A-721,2003)。これらの結果は英文学術誌に投稿中および投稿準備中である。またこれらの結果から肝臓における虚血保護作用には細胞機能維持より、むしろ炎症反応の制御が重要であると仮説し、同様のモデルを用いて好中球由来の炎症反応を制御することによって虚血再灌流障害を軽減できるかどうか検討中である。
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