研究概要 |
線条体は大脳皮質のすべての領域から認知,学習,感覚,運動など行動に関するすべての情報を受けて処理を行い,その結果を大脳基底核の諸核から,視床,そしてまた大脳皮質へと伝えるループ(大脳皮質-大脳基底核-視床)を形成している。この線条体への投射ニューロンはGABAニューロンであるが,neurotransmitterとしてGABA以外にdirect pathwayではsubstance Pやdynorphinを,またindirect pathwayではenkephalinの存在が知られている。さらに,これら投射路は線条体にあるコリナージックニューロンに対して拮抗的に作用していることが考えられる。 また,臨床の場で広く用いられているモルヒネだが,どのような機序で性新運動制止,意識混濁を来すかについては不明な点が多い。このモルヒネによる意識混濁の機序を解明するため線条体にあるコリナージックニューロンに注目し,まずは学習,記憶に強く関連するシナプス可塑性の検討を行った。すなわち,テタヌス後のLTP(long-term potentiation)の発生をpatch clampにより観察した。結果,EPSPにおけるLTP発現にはCaイオンとドパーミン5(D5)のもとで起こり,さらにIPSPに対してもLTPが見られてた。このようにコリナージックニューロンが学習,記憶に強く関与していることが示唆された。 今後,線条体に投射するふたつの投射路に対して線条体コリナージックニューロンの活動がモルヒネによりどのような影響を与えるのかを検討したい。また,Spinorphinは内因性のenkephalin分解酵素阻害作用であるため,コリナージックニューロンに対するenkephalinの効果に対する影響をも検討したい。
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