今年度我々はまずファイブロネクチンの脳虚血に対する作用を検索するために、コンディショナルノックアウトマウスを使用した局所脳虚血モデルを作製。結果ファイブロネクチンは脳虚血時、傷害部分の拡大に対して抑制的に働くことを発見した。次に脳細胞の破壊をいかなる機序に影響して抑制的に働くのかを追究したところ、TUNEL・casepase-3といったアポトーシスに関する物質にファイブロネクチンが影響していたことが発見された。従ってファイブロネクチンは抗アポトーシス作用として働いていることが強く示唆された。現在はファイブロネクチンのどの部分のドメインが抗アポトーシスとして働くのか、また経時的変化の調査を追加実験してファイブロネクチンが虚血後のどの時期に抗アポトーシス作用を発揮するのかを解析している。インテグリンβ1に関しては、ノックアウトマウスによる脳虚血実験を開始、虚血に対してインテグリンβ1が関与していることが示唆されたが、その結果がより確実なものとなるために、そのノックアウトマウス作製の改良が進行中である。一方、抗アポトーシス作用があるとされているサイクロスポリンAを使い、マウスの脳虚血に対する作用を調査している。この目的は将来的にその結果を使って、ファイブロネクチンの抗アポトーシス作用が具体的にどの経路・段階に関わっているかを調べるための手段に採用する予定である。しかしサイクロスポリンAは脳血管関門(BBB)を通過しにくいため、現在BBBノックアウトマウスを使用してサイクロスポリンAの脳虚血に対する作用を精査している。
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