全身麻酔薬のニューロンへの作用部位としてシナプス前と後に分類して、特にGABA、NMDA、AMPA電流への影響を調査することを目的とした。Synaptic networkが構築されたラット皮質ニューロンの初代培養標本から、パッチクランプ法ホールセルモードの膜電位固定法を用いて、自発性の興奮性および抑制性微小シナプス後電流(miniature EPSC ; mEPSCおよびminiature IPSC ; mIPSC)を検出、記録し得た。 1.プロポフォールは細胞外灌流により濃度依存性にmIPSCのdecay phaseは延長した所見のみ得られた。 2.ハロセン0.6mMによりmIPSCのdecay phaseは延長し、mIPSCおよびmEPSCのfrequencyは減少した。 以上1.2.より、プロポフォールはシナプス後受容体への効果を通して、抑制性GABAergicなシナプス伝達を増強する効果があり、さらにハロセンにはシナプス前に働き、神経伝達物質の放出を抑制することによる麻酔効果があることが考えられる。 次に神経伝達物質の放出への影響のメカニズムを考察するために、選択的Ca^<2+>チャンネル拮抗薬を用いて、ハロセンのmEPSCにおけるfrequencyへの効果を調査した。 3.ω-conotoxinあるいはω-agatoxin添加により、ハロセンによるfrequency低下の効果が減少した。 4.ニモジピン添加時はコントロールと有意な差はみられなかった。 以上3.4.よりハロセンはN-typeおよびP/Q-typeのCa^<2+>チャンネルをブロックすることで、細胞内カルシウム流入を障害し、シナプス前よりの興奮性神経伝達物質の放出を抑制する可能性が示唆された。
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