ラット脳慢性低灌流モデルにおける低二酸化炭素血症による脳傷害の評価 方法)雄ウィスターラット(250-300g)を用い、ハロタン麻酔下に両側頸動脈結紮を行い、慢性脳低灌流モデルを作成した。結紮2週間後に、ハロタン麻酔下に気管内挿管し、以下の実験を行った。 1群:慢性脳低灌流ラットに過換気(PaCO2:20-25mmHg) 2群:慢性脳低灌流ラットに正常換気(PaCO2:35-45mmHg) 3群:シャム手術ラット(頸動脈結紮は行わない)に過換気(PaCO2:20-25mmHg) 4群:シャム手術ラットに正常換気(PaCO2:35-45mmHg)14日後に脳スライスを作成し、クリューバー・バーレル染色と免疫組織染色(神経細胞に対してMAP2染色、アストログリアに対してGFAP染色、ミクログリアに対してCD11b染色)を行った。また、レーザードップラー法により脳血流の測定も行った。 結果と考察) 低二酸化炭素血症により、慢性脳低灌流ラットおよびシャム手術ラットともに脳血流は低下した。低二酸化炭素血症により、シャム手術ラットの脳には変化が無かったが、慢性脳低灌流ラットでは、慢性脳低灌流単独による白質の希薄化に加えて、caudoputamenに特異的に白質の希薄化、神経細胞の減少、アストログリアの増殖を認めた。慢性脳低灌流ラットは人間の慢性脳血流低下患者(高齢者や脳血管疾患患者)の良いモデルといわれており、またcaudoputamenは認知機能やワーキングメモリーに関与していることより、この結果は、特にこのような患者では人工呼吸中の過換気が脳傷害を起こす可能性があること、術後譫妄や不可逆性の認知障害の原因と成りうることが示唆された。
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