*)亜酸化窒素とキセノンによるラット脳側坐核からのドパミン放出 われわれはNMDA受容体拮抗薬のケタミンにより、ラット側坐核のドパミンドパミン放出が有意に増加することを報告した。今回は、同様にNMDA受容体拮抗作用を有する麻酔薬、亜酸化窒素とキセノンの作用を調べた。方法)ウィスターラットを用いて、ベントバルビタール麻酔下にガイドカニューラを脳側坐核に植え込み、24時間後にマイクロダイアライシス用カニューラを挿入した。ドパミン測定は、透析液を高速クロマトグラフィーで分離した後、電気化学検出器にて行った。1)70%亜酸化窒素を2時間吸入させる、2)70%キセノンを2時間吸入させる、の2群に対して、ドパミン放出測定を行った。結果と考集)亜酸化窒素、キセノンともにドパミン放出増加は認められなかった。これらの薬物の精神作用や耽溺には、側坐核ドパミン放出以外のメカニズムが示唆された。 *)シグマ受容体に対する麻酔薬の作用 シグマ受容体は精神作用、鎮痛、薬物耽溺などに関与している。ケタミンがシグマ受容体に特異的に結合することが報告されているが、他の麻酔薬の報告はない。方法)ウィスターラットの脳を取り出し小胞体膜を調整した。シグマ1受容体特異的リガンドSKF10047の小胞体膜結合に対する、プロポフォール、ドロペリドール、デクスメデトミジンの作用を調べた。結果)ドロペリドール、デクスメデトミジンは臨床濃度で作用は認められなかった。プロポフォールは臨床濃度でSKF10047結合を抑制し(Ki=14.5Mであり約2.6μg/ml)、その抑制様式は非競合性であった。考察)プロポフォールの精神作用や耽溺性にはシグマ1受容体の関与が示唆された。ハロペリドール誘導体のドロペリドール、コカイン痙攣を抑制するデクスメデトミジンはシグマ受容体を介さないメカニズムで作用している可能性が示唆された。
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