研究概要 |
*ラット脳側坐核ドパミン放出に対するキセノンと亜酸化窒素の作用 同様にNMDA受容体拮抗作用を持ちながら特徴の異なる麻酔薬、キセノンと亜酸化窒素のラット脳側坐核のドパミン放出に対する作用を調べた。方法)マイクロダイアライシス法を用いて、ドパミン測定は高速液体クロマトグラフシステムを使用した。ラットに亜酸化窒素(1MAC,n=7)もしくはキセノン(1MAC,n=7)を1時間吸入させた。結果と考察)亜酸化窒素は有意に側坐核ドパミン濃度を増加させ(吸入開始後40-60分)吸入中止により徐々に吸入前値に復帰した。が、キセノンは増加させないばかりか、減少傾向(有意差は無し)を示した。亜酸化窒素は耽溺性や精神異常誘発作用が認められるが、キセノンにはそのような作用は少ないという臨床上の特徴は、中脳辺縁系ドパミン系に対する作用の違いによることが示唆された。 *プロポフォールのシグマ1受容体細胞内伝達系に対する作用 シグマ1受容体アゴニスト刺激によりIP3受容体が活性化され、ブラジキニン刺激による細胞内カルシウム濃度上昇の増強が認められる。われわれは前年度に臨床濃度のプロポフォールがシグマ1受容体に作用することを見出した。方法)NG-108細胞を用いてプロポフォール(1,10,100μM)によるプラジキニン刺激に対する細胞内カルシウム濃度の変化を測定した。結果と考察)シグマ1受容体アゴニストである(+)ペンタゾシンによりブラジキニン刺激による細胞内カルシウム濃度の上昇は増強されたが、プロポフォールにはこの増強効果が認められなかった。プロポフォールはシグマ1受容体アンタゴニストの可能性が高く、そのさまざまな作用(精神作用、制吐作用、脳保護作用)の一部はシグマ1受容対を介することが示唆された。
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