研究概要 |
研究実績の概要(平成15年度分) 1)平成14年までの研究で腎移植を行ったレシピエントの尿中脱落細胞からRNAを抽出し、腎移植後急性拒絶反応で発現されると考えられる種々のサイトカイン遺伝子発現の有無を検討。活性化リンパ球に特異的に発現されるMig, Granzyme B, TNF-αの各サイトカインmRNAについてRT-PCRによる検討を行った.。その結果,Mig、Granzyme Bの発現は認められなかったが一部のレシピエントの尿検体においてTNF-αの発現が確認された。平成15年度はRT-PCRの方法や検体処理法を確立し、RANTES, MCP-1,MCP-2,IP-10,IL-8,Mig, MIP-1α,MIP-1β,ENA-78,Eotaxinの発現を検出することが可能であった。移植腎生検により急性拒絶が確定した症例では尿中脱落細胞内のMig、RANTES, MCP-1遺伝子発現が増加することが確認された。これらの遺伝子発現は生検による診断確定や他の検査所見より早期に増加することが示唆された。 2)平成14年度までに我々は、慢性移植腎症における組織変化とACE活性の関連性を示唆した。平成15年度においてはレニン・アンジオテンシン系(RAS)と並んで腎血行動態を調整する重要な物質であるNitric oxide(NO)について検討を加えた。腎移植において使用する免疫抑制剤であるCalcineurin inhibitor(CNI)のCyclosporine(CsA)及びTacrolimus(TAC)は強力な免疫抑制効果と共に血管収縮作用を持つことが報告されている。今回は小動物において検討を行い、CsAがNO産生を抑制することとTACはそれ単独ではNO産生に影響を与えないもののNO産生の低下した状態では血管収縮作用が増強されることが判明した。
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