研究概要 |
初代培養したラット尿路上皮細胞をfeeder layer法を用いてscaffold(アテロコラーゲンスポンジとフィブリン糊より作成)上に播種し、腸間膜に固定して生着形態を評価した。1週目では、scaffoldは嚢胞状形態を呈し、その内腔面には上皮細胞が配列していた。その下方には、微小血管や間葉系細胞の侵入が見られた。2週目でも嚢胞状形態は保たれており、内腔面には、正常膀胱と同様,2〜3層に重層化した尿路上皮の配列を認めた。個々の細胞は正常膀胱と比較すると小さかったが,レクチン染色では、正常膀胱と同様の染色性を示していた。scaffold内に侵入した細胞は,alpha smooth muscle actinあるいはdesminに陽性の細胞が見られた。長期的(4週以降)では、間質のリモデリングに伴い、上皮細胞が脱落したと考える所見を認めた。以上より、培養尿路上皮細胞を自家移植することで,異所性であっても分化した尿路上皮で内腔面が覆われた嚢胞状組織の作成が可能なことが示された。scaffold内には,平滑筋細胞を播種していないにもかかわらず,平滑筋様の細胞が観察された。しかし、長期的には尿路上皮細胞の生着は認められず、より安定したscaffoldが必要と考えられた。 次いで、Probstらの方法に準じて作成したBladder Acellular Matrix Graft (BAMG)をscaffoldとして、先程と同様にラット尿路上皮細胞を自家腹腔内移植し、経時的に観察したところ、8週目までの長期的な尿路上皮の生着を認めた。また、再生上皮直下に同心円状に配列する平滑筋様細胞を認めた。 今後改良すべき点はあるものの、この技術により、新たな尿路組織の作成及び尿路再建法への応用の可能性が示された。
|