蓚酸カルシウム結石が形成される初期段階では、蓚酸カルシウム結晶の成長のみならず、その腎上皮細胞への接着が重要なポイントと考えられている。平成13年度の研究成果より、これまでin vitro実験で得られていた腎上皮細胞と蓚酸カルシウム結晶の相互作用(crystal-cell interaction)に関する研究結果を、in vivoで追試するための適正な動物実験モデル(ethylene glycol投与による実験的蓚酸カルシウム結石形成)の条件が確立された。平成14年度はこれを用いて、1)腎上皮細胞と蓚酸カルシウム結晶の接着に電荷的な影響を与える細胞膜内のリン脂質(phosphatidylserine ; PSの細胞外膜への露出)の構成変化と、これに関係するapoptosisの細胞内情報伝達系(caspase)について、2)蓚酸カルシウム結晶成長や凝集を抑制すると考えられているコンドロイチンポリ硫酸が、腎上皮細胞と蓚酸カルシウム結晶の接着に対しても抑制効果を有するか否かについて、検討した。 細胞膜のPSの構成変化について、PSに特異的に結合するannexin Vによる免疫組織化学的検討と2-color flowcytometryによる定量的評価を行ったところ、尿中蓚酸排泄量や蓚酸カルシウム結晶の増加に伴い、細胞表面にPSが発現している細胞が徐々に増加することが確認された。また同様な変化は、apoptosis pathway(caspase)においても認められた。一方、これらの変化は、コンドロイチンポリ硫酸投与により抑制される傾向を示した。 これらの結果から、in vivo実験においても、微小細胞傷害によるcrystal-cell interactionへの影響が、定量的に分析できることが明らかとなった。他の要因による腎上皮細胞傷害の検討への応用も可能であり、結石を抑制する薬剤の評価にも有用と考えられた。
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